■ 宮部みゆき『ブレイブ・ストーリー』(角川書店)
後半追い込んで読了。小説読んだのは久しぶり。
ごく普通の小学生の家庭に突然訪れた、家庭崩壊の危機。両親の離婚を阻止すべく、主人公は謎めいた転校生に誘われて「幻界」に旅立つ。たどり着いた者の願いを叶えてくれるという「運命の塔」を目指して――。てな感じ。
設定や各エピソードはコテコテの、悪く言えばステレオタイプなRPG。なのにそれが陳腐にはなっていないのは、幻界に旅立つまでの主人公の日常や背景が丁寧に(長々と)書かれているのが大きいと思う。幻界の出来事が主人公の「現世」で得た知識や体験を元に描かれ、またそれが「現世」とオーバーラップする。ファンタジーだけど絵空事ではない。主人公にとっては幻界もまた「リアル」なのだと。
あとはやっぱり筆力かねえ。ウスバカゲロウの一生すらベストセラーにするかもしれないと思う、この人は。
個人的に、RPGを揶揄する方向に行っていないのもマル。旅を始めた最初の頃、主人公がどうしたらいいか分からず、自分のやっていたRPGの記憶を引っ張り出して「うーん違う」と悩む……という場面が時々あるけど、別にそれでRPGのお約束をバカにするわけではなく、単に主人公の体験の中にそれがあるから、幻界理解の手がかりとして使われるだけ。それどころか、読み進めるうちにRPGに対する愛を感じる。のは単に作者のゲーム好きを知っているからかも。でも、RPG永遠の命題、「勇者はなぜ世界を救うのか」に対する、作者なりの答(の一つ)でもあるんだろうなあこれ。
1冊目の大半を小学生の日常やドロドロ家庭崩壊劇に費やしているので、冒険ファンタジー小説!と思って読み始めると挫折するかも(※)。そこをちゃんと読み進められればハマると思う。
※そういう意味でスニーカー文庫の4分冊は罪だ……ファンタジー小説なのに1冊目はたぶん幻界にたどり着かない(笑)